▲屋久町役場本庁の商工観光課を訪れる。 2月2〜4日、鹿児島県屋久島町を視察しました。最初は2月1〜3日を予定していましたが、知事への要請活動が急遽入ったためにそちらを優先し、一端全てをキャンセルして改めて一日遅れの段取りをし直してようやく辿り着いた視察地でした。
ここは平成5年12月にわが国初の世界自然遺産に登録されました。人類共通の財産として未来に引き継ぐべき豊かで特異な自然が息づいている貴重な島で、そこで進められている環境行政と観光行政をテーマに調査いたしました。
伊丹空港から搭乗した機窓より望む屋久島の山々は、男性的で威厳に満ちた逞しい稜線を一杯に広げて迎えてくれました。安房という港のまちに宿をとり、公共交通機関が不自由なこの島では短時間に効率良く視察するためにはレンタカーを使うしか道が無く、直ちに手続きを済ませて屋久島町役場の安房支庁と宮之浦本庁へと車を走らせました。
屋久島町商工観光課の寺田太久己課長補佐が、丁寧に屋久島町の観光行政について資料に基づいて丁寧にご説明下さいました。
▲屋久町営「屋久杉自然館」を視察 それによると屋久島への入り込み客数は、世界自然遺産に登録された年と比較すると倍増しており、一昨年に調査を開始して以来初めて40万人の大台を突破しました。リーマンショックや新型インフルエンザのマイナス影響などによる一時的な減少はあるものの、世界的な「エコツアーの拠点」として環境意識の高まりにより今後も観光客は減少することなく推移していくものと予測しているそうです。
ただ、ホテル、民宿、レンタカー、弁当屋など観光収益が伸びている一方で、九州最高峰や縄文杉などへの登山客が主で、山小屋に宿泊し安価な弁当を利用するため他の観光地のように入り込み客数と単純に連動して観光収益や税収が伸びない面もあり、今後の課題を残しているとのことでした。
また、屋久島町は観光協会を育成することに力を入れており、年間4600万円の予算規模を持ち、そのうち3500万円は会費や収益事業などの自主財源でまかなう財政力のある観光協会が育ってきており、そこが登山道の整備や携帯トイレの普及、環境マナー指導や輸送サービスなど積極的な事業展開を進めていました。
▲「白谷雲水峡」の観光協会が石や木材で整備した登山道

▲原生林道の杉の根の下 2日目は、午前中は屋久島保護管理協議会が管理している白谷雲水峡の原生林の中を実際に5時間半ほど歩いてみて、観光協会が整備した登山道やエコツアーの人材育成などを視察いたしましたが、若い人材が多く育成されている反面、急速にガイド業などが発達したために統率が不十分で観光客から見て不安な点も感じました。
▲「屋久島環境文化村センター」の屋久島全体像模型
午後は環境保全の拠点である「屋久島環境文化村センター」に赴き、環境意識の高揚策や動植物保護についての指導法を学び、自然の尊さと環境保護の必要性を訴える強力なメッセージを肌で体感いたしました。このセンターは県と町の出資により設立された屋久島環境文化財団で運営されていますが、この財団は「屋久島を『環境文化村』にするという構想」をコンセプトに設立されたものです。
▲ヤクスギランドにある堂々たる2000年杉 次に、保護管理協議会が管理しているもう一つの森林コースである「ヤクスギランド」も実際に1時間20分歩いてみて、自然観光地としての見せ方や管理運営法などを調査いたしました。
ここは、観光客が体力や持ち時間に合わせて30分、50分、80分、150分など4つのコースの中から自由に選べる形となっており、普通の履物でも楽しめる気軽さとある程度運動負荷のかかるトレッキングの味わいをも合わせ持つよう配慮された自然公園となっていました。
▲神々しいままに聳え立つ「紀元杉」は樹齢3000年以上を誇る さらにはここから足を伸ばして標高1300m付近にある樹齢約3000年の「紀元杉」を視察し、屋久島の自然観光資源の迫力に圧倒された次第です。
▲「屋久杉自然館」に展示している「縄文杉の枝」
3日目は、屋久町営の「屋久杉自然観」を訪問しました。ここは「屋久杉の全てを語る博物館」というコンセプトで平成元年に開館した施設で、最古最大の屋久杉といわれる「縄文杉」の枝の一部が豪雪のために折れて落下したものが展示されているものを中心にを見学しました。
この主役をメインにして、屋久杉の魅力を観光客に強くアピールするとともに、より一層屋久杉に関心を持ってもらうようなクラフト指導や展示や映像説明が実施されていました。
▲環境省が運営している世界遺産センター内の展示板
最後に、国の機関である環境省が運営している「世界遺産センターを視察しました。ここは、世界にある自然遺産を幅広く紹介するとともに、その中にある屋久島の自然にクローズアップした捉え方で環境保護を訴える施設です。自然林を傷めないための携帯トイレの展示など環境保護に必要な情報が得られる施設となっていました。
▼今回の視察調査の締めとなった国立世界遺産センターの前で
総じて言えば、屋久町は世界遺産に登録された自然を軸に、「環境保護」をテーマにした文化普及の中心地を目指し、リピーターを増やすために、町が外的には国や県と協働しながら、内的には観光協会を中心に保護管理教会や文化保存会、特産品協会などと体制を組み、一つひとつの課題を乗り越えるべく奮闘しているのが全体的な観光・環境行政のイメージと言えるでしょう。
特に観光協会については、幹部会員2名の推薦が無くては入会できないステータス的な誇りと、入会すれば客の紹介サービスなど大きなメリットがあるため、年間1万5千円の高価な会費も喜んで納めており、年々会員が増えているということで、町の強化政策がヒットしていることが実証されています。
本県は、屋久島ほどの強力な自然は無いものの、屋久島よりはるかに人口圏からの交通の便は良く、この利点を活かしながら食や歴史や伝統工芸を磨き上げて、中心軸やテーマを絞り込み、実行組織としての観光団体の強化、総合的な体制づくり、国・県・市の連携、人材の育成、課題への集中的な取組み、大胆なアイディアによる宣伝広報活動など、より効果的に観光行政や観光戦略を考えていかなければならないと感じた視察となりました。